毛髪にまつわるQ&A

Q&A about hair

毛髪にまつわるQ&A

世間にはエセ科学的な根拠のないいかがわしい広告も多々存在します。ウソの説明に騙されないためにも毛髪に関する正しい知識を身につけて、健康で美しい髪を保ちましょう。
当協会の会員サイトでは、様々なQ&Aを取りまとめた「毛髪診断のための実用知識Q&A」をネットブックで閲覧できます。このQ&Aにはその一部から抜粋したものの他、ちょっと気になる知識を掲載しています。

 
 

 

 

ヘアカラーについて

ホームカラーとサロンカラーの違いは何ですか?

ホームカラーもサロンカラーも成分的にはあまり変わりはありません。しかしホーム力ラーは美容の専門技術を持たない一般の消費者が対象です。一方サロンカラーは理美容師が使うことを前提につくられています。
したがって、ホームカラーは、素人でも使いやすく染められるようにつくられており、サロンカ ラーは細かい塗りわけができることを前提に、微妙な色味を求める技術者の要求に応えるようにつ くられています。ホームカラーが素人でも常温で染められるということは、多くの場合、染料の量、アルカリなどを多く含むことになり、毛髪の損傷も大きくなります。これに対し、サロンカラーは、 技術者が細かく丁寧に塗布できることを前提にしています。
 
「毛髪診断のための実用知識Q&A」より

力ラーを繰り返し行っていると、それまでは大丈夫だったのに突然頭皮がかぶれる ことがありますが、なぜでしょうか?

ヘアカラー(酸化染毛剤)で染毛を何回か行ってもかぶれなかった人が、ある時かぶれるということは、新たに起きたアレルギー感作か、刺激性接触皮膚炎の可能性が高いと思われます。かぶれなかった時は、肌のバリア機能が正常に働いていて原因物質が肌の角層を超えて侵入しな かったのですが、あるとき過酸化水素とアルカリ剤など肌の構造を破壊しやすい成分が角質の構造を壊し、原因物質が浸透したことによって、炎症が引き起こされたと考えられます。 その後、染毛のたびにかぶれが起きたり、接触していない部位がかぶれたりしたら、アレルギー性接触皮膚炎を起こしたことが考えられます。刺激性接触皮膚炎が起きた際に微量の抗原も肌に侵入したことによって感作が成立し、その後わずかな原因物質でもアレルギー症状を起こすようになったのです。
 
「毛髪診断のための実用知識Q&A」より

 

薄毛について

ストレスで円形脱毛症になったみたい。どうすれば治りますか?

円形脱毛症は、長年ストレスが原因とされてきましたが、最近ではストレスは発症のきっかけに過ぎず、正常な細胞を攻撃してしまう自己免疫反応との考えが一般的になっています。「円形脱毛症かと思ったら、加齢や遺伝による男性型脱毛症(AGA)だった。」というケースもありますので、先ずは皮膚科専門医への受診をお勧めします。
毛髪の疾患は外傷の治癒とは異なり、適切な治療を受けても治癒までには相当時間を要します。途中で諦めず、医師の指示に従って、効果が現れるまで継続して治療を受けることが大切です。

髪の生え際や分け目が目立ってきた気がします。良い対処法はありますか?

薄毛と呼ばれるものは、老化によるものと疾患によるものに大別されます。
老化によるものであれば、毛髪自体が細くなることでりボリュームがなくなります。その場合、ヘアスタイルを工夫することである程度は目立たなくすることができます。例えば、分け目をいつもと変える、パーマなどボリュームが出るような施術を行う、短めにして根本を立ち上がるようにヘアスタイリング剤を使うなどがあります。具体的には、行きつけの理美容師と相談されると良いでしょう。
老化ではなく疾患で、特に女性には生え際が後退するのではなく、頭髪全体が薄くなるびまん性脱毛が、30代後半頃から発症する方が多いと言われます。このような場合は皮膚科専門医の診療を受け、適切な治療を受けることが大切です。

子供が薄毛になることはありますか?

学童期の子供に多いとされる疾患にトリコチロマニア(抜毛癖)があります。抜毛症は自分の髪を抜く癖が止められない状態で、重症化すると頭髪の一部が丸ごとなくなることもあります。毛髪の疾患ではないので育毛などの治療は不要ですが、心理的に何らかのストレスが発症の引き金になっていることもありますので、精神科や神経科の受診を検討してみてはどうでしょうか。

 

抜け毛について

秋に抜け毛が増えるというのは本当ですか?

抜け毛の数は、年間を通して一定ではなく、春先と秋に多くなるとの報告があります。※1
春先は、冬の寒さに適応していた身体が夏の暑さに適応できる身体へと変化する季節で、その変化により脱毛が多くなるとか、秋は夏の暑さで毛根にダメージを受け抜け毛が増える等の説が唱えられますが、立証されたものはありません。
頭髪は約10万本が生えていて、1日の抜け毛の数が100本程度であれば問題ないと考えられていますが、10~11月では1日140本前後の抜け毛が一過性に見られたとの報告もあり、その数にはある程度の幅があります。※2

※1出典:Orentreich,, N : Scalp hair replacement in man. Advances in Biology of Skin, vol 9, Hair Growth, p 99, Pergamon Press, Oxford, 1969
※2出典:服部道廣, 養毛・育毛剤の評価法-人における新評価法-,順 天堂医学37(4)P.595~600(1992)

 

白髪について

白髪は抜くと増えるの?

白髪も黒髪も、それぞれ独立した毛包から生えています。そして、白髪を抜いたことで他の毛包が影響を受けて白髪になるということはありません。しかし、増えないからといってむやみに白髪を抜くのは好ましくありません。白髪(黒も同様に)を無理に抜くと毛根がダメージを受けて、ヘアサイクルに悪影響が起こり、健康な毛髪が生え難くなる可能性があります。
昔から「白髪を抜くと増える」と言われますが、これは白髪が気になる年齢やタイミングと重なることで、白髪を抜いた後に増えたと感じたのでないかと思われます。

白髪は抜いてもいいの?

白髪を無理に抜くことは好ましくありません。無理な力が毛根にかかることで、ヘアサイクルに悪影響を与え、健康な毛髪が生えにくくなる可能性があります。しかし、白髪があることにストレスを感じる場合は、染毛剤やヘアマニキュアなどで白髪を隠すか、あるいは根元からカットすることが健康な髪を守る観点からは良いと思います。

 

くせ毛について

雨の日など湿気の高いと髪型が膨らんだり、せっかく朝に整えたのにクセが出るのはなぜですか?

毛髪の水分量は周囲の環境に影響され、湿度が高いと増えて、空気が乾燥していると減少します。毛髪の水分量が増えると、毛髪は膨潤し、太くなります。同時に、毛髪が水分を吸うと、毛髪内の結合(主に水素結合)が切れて柔らかくなり、髪本来の性質(クセやうねり)が出やすくなります。そのため、ヘアスタイルが広がったり、崩れたりするのです。
ヘアスタイルを維持するためには、樹脂で固まるヘアスプレーを仕上げに用いたり、ヘアワックスなどを用いて固定する、パーマをかけて髪本来の性質(クセやうねり)が出にくくするなどの対策があります。行きつけの理美容室にご相談すれば、適切な対処法を教えてくれるでしょう。

歳をとると髪の毛が歪んだり、パサパサになるのはなぜ?

女性の単位面積あたりの硬毛数(文献では40ミクロン以上の毛髪を硬毛と定義)が薄毛に大きく影響を与え、40代を越えると明らかに硬毛数は減少し、後頭部と比較して頭頂部の減少が顕著との報告があります。※1
細くなった毛髪は、毛皮質(コルテックス)の量が減っていますので、ダメージを受けていなくとも水分を保持する力が弱まります。すると、パサついた感触となって現れます。
毛髪が細くなると若い時と比べてコシもなくなります。すると、セットした髪型が崩れ易くなりますので、歪んだと感じるのではないでしょうか。
※1出典:皮膚,第37巻,第6号722-732.平成7年12月

 

育毛について

髪に良い食事や食品はありますか?

最近の研究では、脂質やコレステロールの摂取量が高く、食物繊維の摂取量が少ないとキューティクルの損傷が確認されたとの報告※1や、栄養不足の兆候としてタンパク・エネルギー低栄養では簡単に毛髪が抜け、タンパク質・ビオチン・亜鉛不足でまだらな毛髪、銅・ビタミンC不足では毛髪のちぢれ、ヨウ素不足で乾燥毛・生え際の後退に影響するとの報告※2もあります。
つまり、何か特別な食品が髪に良いというものではなく、無理なダイエットや偏食が影響して脱毛を引き起こすこともありますので、バランスの良い食事を心掛けることが大切です。
※1出典:若林萌,金城学院大学大学院人間生活学研究科論集,14,13-20 (2014-03-18)
※2出典:Larson-Meyer DE, Woolf K, Burke LM.Assessment of nutrient status in athletes and the need for supplementation. Int J Sport Nutr Exerc Metab, 28 (2) : 139-158, 2018.

発毛剤と育毛剤、養毛料の違いは何ですか?

「発毛剤」の分類は、法的なものではありません。ミノキシジルを有効成分とする医薬品の効能・効果は、「壮年性脱毛症における発毛、育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防」で国が承認しています。このことから、医薬品の中には「発毛剤」と謳うものがあります。
また、医薬部外品は法的に「育毛剤(養毛剤)」の名称があります。その効能効果は、主に「育毛、薄毛、かゆみ、脱毛の予防、毛生促進、発毛促進、ふけ、病後・産後の脱毛、養毛」で、「薬用」の名称がつけられたものが多くなっています。
化粧品の効能効果は、主にフケ・かゆみを抑え、水分・油分などを補って、毛髪と頭皮の健康を保つことで、「養毛料」「育毛料」などと呼ばれます。中には医薬部外品と同じ名称である「育毛剤(養毛剤)」と謳うものもありますので、容器(箱)に「医薬部外品」と記載してあるか否かや、全成分表示のあるものでは有効成分の記載の有無で判断できます。

 

毛髪の傷みについて

ダメージヘアの補修は可能でしょうか?

まずヘアケア剤(補修剤)で補修できるダメージはわずかでしかないと認識する必要があります。補修よりも傷みの少ない施術をすることが必要です。また、補修剤と言われるものの多くは毛髪自体を変えているのではなく、手触りを改善しているものがあります。例えばハイダメージ 毛の人に、シリコーンを多く含んだトリートメントをすれば、髪質が良くなったと感じるでしょう。 しかし、毛髪自体は何も変わったわけではありません。
一方で、タンパク加水分解物(PPT) のように、繰り返し使用することによって、毛髪自体の強度を徐々に向上させるものもあります。しかし、補修剤によく使われるPPTやCMC*様成分は、毛髪に元々存在するタンパク質やCMCのように、毛髪に結合するわけではありません。したがって、その持続力は数回のシャンプーで取れてしまう程度ですが、ホームケアで繰り返し補修することで持続力が上がり、次のヘアカラーやパーマなどの施術によるダメージを押えることができます。
*CMC:CMC(細胞膜複合体:Cell Membrane Complex)は、キューティクル(毛小皮)同士及びコルテックス(毛皮質)内の細胞間の接着に関与しています。更に、コルテックス内の水分やタンパク質の溶出経路でもあり、染毛剤やパーマ剤の薬剤の浸透経路にもなっています。
 
「毛髪診断のための実用知識Q&A」より

毛髪に熱を与えると傷むというけど、何度までなら大丈夫?コテやヘアアイロン、ドライヤーを使いたいので。

毛髪は熱により損傷します。乾いた状態では、80~100℃で強度が弱くなり始め、120℃前後からキューティクルに膨らみが起こるようになります。湿度が上がると影響は低温から起こるようになり、湿度70%ではケラチンの変性は70℃から始まり、湿度95%では55℃から始まるとの報告があります。
洗髪後にタオルドライした状態は、湿度100%とみなされますので、毛髪に伝わる熱は55℃以上にならないよう工夫する必要があります。例えば、ドライヤーをかける時に、最初は遠目からかけて、乾いてきたら近づける、ヘアアイロンを使用する時は、タオルドライして直ぐにヘアアイロンを当てないで、少し乾燥させてからヘアアイロンを当てる、などの工夫が大切です。
ヘアアイロンについては、180℃以下で1カ所2秒間以内で用いることがストレートパーマの使用条件としてパーマ剤の使用の注意に定められていますので、これに参考に用いることが大切だと思います。

 

頭皮について

最近、地肌(頭皮)が痒くなる。どうして?

痒みが起こる詳しいメカニズムはわかっていませんが、乾燥や温度、刺激性の物質、細菌などで引き起こされることが確認されています。人によっては、化粧品などの成分でも起こることがあります。
痒みのメカニズムは、皮膚の炎症(湿疹)によって皮膚に存在する肥満細胞からヒスタミンという物質が分泌され、しれが知覚細胞に作用し脳に痒みを感じさせることが一つの有力な説となっています。
では、なぜ乾燥や温度に敏感になったり、刺激性の物質が皮膚内部に入ったり、細菌に侵されるかというと、体質もありますが日頃のケアに問題がある場合もあります。特に、乾燥には気を使うことが大切です。例えば、乾燥肌の人が肌の乾燥しやすい冬場に素肌のまま外出してしまえば、ますます乾燥が進み、痒みやかぶれを生じやすくなるでしょう。
季節に応じて、皮膚に水分や油分を補う保護クリームなどを用いて、皮膚バリア機能を保護する適切なケアが大切です。

頭皮の状態は、髪質に影響するのでしょうか?

毛髪は分裂増殖した毛母細胞が内毛根鞘などを鋳型として押し固められながらできます。したがって円形脱毛症や先天性毛髪疾患、抗がん剤など薬剤による脱毛後などで内毛根鞘に変化が出ると毛髪の最外層であるキューティクルが変化し、形状にヨレが出たり、手触りが悪化したりします。
また、最近の研究では赤みがあり荒れた頭皮には炎症が多く、炎症性の因子がキューテイクル形成に影響を与え、ハリ・コシ・ツヤの低下した毛髪がつくられやすいことがわかりつつあります。 すなわち、頭皮の状態は髪質に影響を及ぼす可能性が大きいと言えます。
 
「毛髪診断のための実用知識Q&A」より

 

シャンプーについて

シャンプーは毎日しないといけないの?

前頭部及び頭頂部の皮脂量は、側頭部及び後頭部と比較して分泌量が多く、洗髪直後から分泌し始め, 24時間後にはほぼ洗髪前と同じ皮脂量になります。一般に、顔面の皮脂分泌量の回復は、洗顔後約2時間で、ほぼ元の状態になると言われますので、頭皮の皮脂の回復は遅いと言えます。(J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn. 27 (4) 546-549 (1994))
シャンプーは、この分泌した皮脂や汗、外部からの汚れを取り除くことが目的です。汚れを放置しておくと、酸化や細菌の繁殖によって臭いが発生したり、頭皮に炎症を起こしたりしますので、1日に1回、少なくとも2日に1回は洗髪するとよいでしょう。
また、前額部と比較して頭頂部の水分は男性では約半分、女性では約3分の1で、頭皮の水分量は少ないとの報告があります(J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn. 47 (1) 3-8 (2013))。そのため、1日に2回も3回も洗髪するのは洗い過ぎで、頭皮が乾燥し、フケや痒みの原因となってしまいますので、避けるべきでしょう。

高級アルコール系界面活性剤を配合したシャンプーは、髪や頭皮に悪いのでしようか?

毛髪科学を学んだ人なら、高級アルコール系=「刺激が多い」と考えるのがナンセンスで あることがわかると思います。例えば高級アルコールのーつであるラウリルアルコールは、ヤシの実から採れます。ヤシの実石けんなどと言われると喜んで使う人が、高級アルコールと言われると危険と感じてしまうのはナンセンスであることがわかるでしょう。もちろん、高級アルコール系の一つであるラウリル硫酸塩は脱脂力が強く、人によってはピリピリ感じる人がいますが、プレーンリンスを十分に行うことや量を調節したりすることで刺激を緩和することもできるのです。ただ言葉のイメージだけで判断しないようにしましよう。
 
「毛髪診断のための実用知識Q&A」より

シャンプー後ドライヤーで髪を乾かさなくてもいい?

頭皮を濡れたまま放置すると、雑菌が繁殖して臭いを発生したり、炎症を引き起こしてしまったりします。そのため、シャンプー後などはヘアドライヤーを用いて、早めに乾かすことが大切です。
この時、毛髪にヘアドライヤーを近づけ過ぎない、1カ所に当て過ぎないなどヘアドライヤーの熱から毛髪と地肌を守ることに心掛けることが大切です。

トリートメントとコンディショナー、リンスの違いは何でしょうか?

トリートメントとコンデイショナー、リンスに明確な違いはありません。人によって、あるいはメー力一によって、リンスよりもコンディショナーは油分が多いなどと説明したりしますが、それにあまり根拠はありません。なぜなら、その言葉の意味を考えれば、トリートメントは処理するものであり、コンディショナーは感触や状態を整えるものであり、リンスは洗い流すものですから、それぞれの意味合いをどの言葉も含んでいるのです。
 
「毛髪診断のための実用知識Q&A」より

ボタニカル成分は、髪や頭皮に良いのでしょうか?

ボタ二カル(botanical) とは英語で「植物の」「植物由来の」という意味です。頭髪化粧 品だけではなく植物の絵柄のファッションやインテリアなどまで広く使われています。
植物由来の成分を配合した製品を一般的に「ボタ二カル〇〇」と呼んでいますが、厳密な基準や定義はありません。ボタ二カル〇〇という販売名称を付けることはどんな製品でもできます。
ボタ二カル成分すなわち植物由来成分であろうと、動物由来成分であろうと、合成成分であろう と、毛髪や頭皮に与える影響は様々です。またその影響に個人差もあります。
ボタ二カル成分配合だからと言ってすべての物が安全というわけではないことをご留意ください。どの製品を使おうかと思われるときには成分表示やコンセプトを参考にされてご自身の毛髪や頭皮のコンデイションに合っている、あるいは使用する目的に合っているものを選んでください。
 
「毛髪診断のための実用知識Q&A」より