毛髪は死んだ細胞であり、一度ダメージを受けると元には戻りません。市場には毛髪損傷の回復を謳う製品もありますが、本質的には毛髪表面をコーティングしたりダメージ部分にたんぱく質等を補い補修するものであり、元の状態に戻すものではありません。
そのため、毛髪を傷めないことが最も大切で、傷んでしまったらそれ以上ダメージが進行しないようにケアすることが大切です。
このように乱れた所から、キューティクルの剥離や毛皮質に裂け目ができる等、毛髪損傷に繋がってしまいます。
また、毛先の枝毛を見つけた場合、その部分を自分でカットすることがあろうかと思います。その際、身近な刃物で済ませる場合もあるでしょう。
爪切りで切った場合、一見枝毛はなくなったように見えても、その断面から再び枝毛が発生してしまい、更に損傷が進んでしまうでしょう。
一方、剃刀でカットした断面は、美容シザースでカットした断面と似ていて、奇麗に整っています。家庭内で毛先をカットする際は、剃刀を用いるのが毛髪損傷を防ぐ面では適すると考えられます。
2.ヘアアイロンやヘアドライヤー等による熱
毛髪は、乾いた状態では、80~100℃で強度が弱くなり始め、120℃前後からキューティクルに膨らみが起こるようになります。湿度が上がると影響は低温から起こるようになり、湿度70%では70℃から変性が始まり、湿度95%では55℃から始まるとの報告があります。
つまり、湿った毛髪は熱の影響を受け易いので、注意が必要です。
熱の影響を避けるには、ヘアドライヤーを当てる際は、送風口を近付け過ぎない、1カ所に長時間当てないことが大切です。高温アイロンを用いる際は、温度設定に気をつける、毛髪を乾かしてから使用する、1カ所に何度も当てない等、毛髪に熱が伝わり過ぎないような使い方を心掛けることが大切です。
3.ブラッシング等による摩擦
キューティクルは硬く丈夫な組織ですが、物理的作用により剥がれ落ちます。その代表がブラッシングです。
枝毛は、毛先からできると思われがちですが、毛先から1cmほどのところに裂け目が入り、そこからできることが多いのです。そして、ブラッシング時間が長いほど、毛髪にかかる荷重が大きいほど発生しやすくなります。
一般に、ブラッシングは毛髪の根元から毛先に向かって行われますが、その時毛髪にかかる荷重は毛先の方が大きくなります。このような毛先への負担を軽減するため、ブラッシングは毛先を整えた後、さらに中間から毛先を整え、最後に根元から毛先を整えるように、段階的なブラッシング(ステップワイズ法といいます。)を心掛け、毛髪への負担を抑えることが大切です。
また、環境湿度が低くなるにつれて枝毛の発生率は高くなります※。つまり、夏場より冬場の方が枝毛はできやすいと言えます。
そのため、乾燥した冬場のブラッシング前には、帯電防止剤のような毛髪保護剤の配合された香粧品を用いてから、ブラッシングを行うことも大切なヘアケアの一つです。
さらに、乾いた毛髪と湿った毛髪をブラッシングした場合、濡れているときの方が毛髪にかかる荷重は大きくなります。つまり、濡れているときのほうが毛髪は傷みやすいと言えます。シャンプー後の濡れた毛髪をタオルドライだけで、いきなりブラッシングをすると損傷だけでなく、毛髪が絡まって断毛も引き起こしてしまいます。
シャンプー後のブラッシングは、ヘアドライヤーと手櫛で乾かした後、ステップワイズ法を用いて行いましょう。
※(川野道子他,ブラッシングによる枝毛の発生と予防,皮膚と美容,Vol28,No1,(1996))
4.過度なパーマ、カラー施術
施術後のお手入れ
パーマもカラーも使用上の注意を守り、適切に用いれば安全に使用できます。しかし、誤った使用方法や過度な使用を繰り返したりすると毛髪を傷めていまいます。
パーマもカラーも毛髪にとっては大きな手術をするようなものです。施術後は、キューティクルが剥がれやすく大変傷みやすい状態になっていますので、施術後は普段以上に毛髪をいたわるよう工夫することが大切です。
例えば、シャンプー時の摩擦に気をつけ、施術後しばらくは損傷毛用のインバストリートメントを使用する、ブラッシング時には摩擦を低減するようなブラッシング剤を用いて不要なブラッシングは避ける、などの対策が考えられます。